杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

さあ次へ行こう。

ベースは書き続ける生活 小説を一篇、書き上げました。 400字詰め原稿用紙にして約100枚、つまり短篇と中篇の間くらいの長さになります。内容はここには書きませんが、書き上げた後の心境としては、さあ次へ行こう。という感じです。 賞を受ける・受けないは…

疲れの経済損失は1.2兆円

日本は「疲労大国」 夏嶋隆『疲れないカラダ大図鑑』(アスコム、2021年)を、興味が湧いたので手に取って読んでいます。 「この本を読めば あなたの疲れは消え去ります。」と最初に載っていて、ちょっと胡散臭い感じがしましたが、まだパラパラとではあるも…

情弱と無知

縁なき衆生は度し難し 最近、言葉を誤用している人のことを情弱だと言っている人がいて、いやそれは情弱じゃなくて無知だろう、と思ったことがありました。 情弱とは、情報にアクセスする手段を知らない、あるいは情報を活用する力がない人を指す言葉です。…

煮ても焼いても食えぬ小説

独特の小説世界 大江健三郎『取り替え子』(講談社文庫、2004年)を読んでいます。主人公の古義人、その義兄で自殺した吾良は当然ですが、ジャーナリストやコメディアン出身の映画監督など、もろもろの登場人物のモデルは誰なのか、読めばすぐ察しがつきます…

小説家は重労働

イメージがあるかどうか 小説を書くのは重労働だとディーン・R・クーンツの『ベストセラー小説の書き方』(朝日文庫、1996年)に書いてあります。そして、クーンツのそういう正直さには好印象を抱く、と吉田親司の『作家で億は稼げません』(エムディエヌコ…

「ライター」と「書けるライター」

ライターは資格ではない 佐藤友美『書く仕事がしたい』(CCCメディアハウス、2021年)は、ライターとして生計を立て、かつ活躍し続けていくためのマインドとスキルを伝える本です。とはいえ、文章術の類いはなく、スキルというのはどちらかというと処世術の…

冬の終り

近所の桜並木が開花し始めました。春ですね。 今回の冬はとてつもなく寒かったですが、ようやく抜けてきたという感じがします。とはいえ、一時期は温かくなったもののまたすぐ寒くなったこともあったので、油断していてはいけないと思います。 この冬は、小…

佐藤忠男先生の思い出3

卒業制作の思い出 今もあるのか分かりませんが、私が日本映画学校に学んでいた頃は、三年間の学業の総仕上げとして「卒業制作」という実習がありました。 私は武重邦夫さんのゼミで、韓国人留学生を主人公とする青春映画のチーフ助監督を担当しました。とこ…

佐藤忠男先生の思い出2

上映後の対話 映画史の授業で観た(たしか『瀧の白糸』だったと思いますが)サイレント映画について、どうして芝居があんなにオーバーアクションなのか、授業の後に職員室のソファで休憩していた佐藤先生に聞きに行きました。佐藤先生は、あれは歌舞伎の影響…

佐藤忠男先生の思い出1

知ったのは大学時代 映画評論家で日本映画大学元学長の佐藤忠男先生が亡くなりました。91歳。亡くなったのは17日とのことです。 佐藤先生といえば、なにしろ私は日本映画学校の卒業生ですので、佐藤先生に直接教わったことがあり、思い出がいくつもあります…

小説「映画青年」連載開始

大切な私小説 姉妹ブログ「杉本純の創作の部屋」で、小説の連載を開始します。 タイトルは「映画青年」です。数年前、ある新人文学賞に応募し落選した作品ですが、昨年5月の文学フリマ東京では他の短篇とともに一冊の本にして販売しました。 映画学校の卒業…

小説を書く日々

時間があれば、机に向かう ある小説新人賞に応募するため、時間を見つけては小説を書き継いでいます。平日は、書ける日もあれば時間をとれない日もあります。 ライフワークである街歩きやそれに関連する調べ物、映画を観たり本を読んだりするのもやめ、また…

魂の産婆術

必読の書 井上真琴『図書館に訊け!』(ちくま新書、2004年)は、調べ物をする人は必読の本じゃないかと思うくらい、調査・研究の基礎知識を広く与えてくれます。読んでいて、この一冊でいいんじゃないか、と思うくらいですが、そんな風に思うのは恐らく著者…

大江健三郎文庫

完成したら行きたい 先日、東京大学へ行く用事がありました。本郷だったのですが、用事を済ませた後に敷地内を歩いていたら東京大学コミュニケーションセンターというショップがあったので、入りました。中に東大が出しているPR誌の類いがたくさん置いてあり…

雑談失言

コミュ力の低い人は仕事に集中 ようつべでたまにビジネス動画を見ています。こないだ見た動画は、コミュニケーション力の低い人が職場の人間関係を良くするためには、コミュニケーションで何とかしようとせずに自分の仕事をきちんとまっとうする方が良い、と…

「無駄な努力」について

荒唐無稽な設定 三田紀房『インベスターZ』1巻(講談社、2013年)を読んでいます。投資をテーマとした漫画ですが、設定がまず可笑しい。 中一の主人公は、北海道にある日本一の進学校「道塾学園」に入学する。そこは創立130年の歴史を持ち、入学金も学費も全…

西村賢太と真梨幸子

若くしてデビューできなかった二人 朝日新聞3月12日朝刊25面の読書コーナー「ひもとく」には作家の真梨幸子による「西村賢太の私小説」が掲載されています。 内容は全体に、西村の作品の感想と西村との思い出などを綴ったもので、評論というよりはエッセイに…

「稼ぐ力」

有益な一冊 小幡和輝『学校では教えてくれない 稼ぐ力の身につけ方』(小学館、2020年)を読みました。 メルカリに関する本をいろいろ探して読んでいる中で出会った本ですが、メルカリについて書かれている箇所はわずかでした。とはいえ「稼ぐ力」についてい…

「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」と地球空洞説

『野火』への影響など Eテレ「100分de名著」、3月7日からはエドガー・アラン・ポー(私はポオと書きます)のスペシャルで、第一回はポオ唯一の長篇である「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」(私は「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」と…

運動は好き。運動部は苦手。

運動部に馴染めない 運動は好きだけど運動部は苦手。そういう人は少なくないのでは?と思います。 私は体を動かすことが好きで、時間があるとよく公園で球技をしたり、プールで泳いだりしています。小学校時代には地元のサッカークラブに所属し、スイミング…

言葉には敏感。でも話すのは苦手

HSPの特徴 エレイン・アーロン著、冨田香里訳『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』は、HSP(とても敏感な人)が社会でうまく生き、人生を切り開けるよう助言する本です。HSPに関する本はこれまで何冊も読んできましたが、それらの嚆矢と…

寺田博と色川武大

「純文学にこの人あり」 寺田博『昼間の酒宴』(小沢書店、1997年)を読んでいます。 寺田は1961年の河出書房新社「文藝」復刊に携わった編集者で、後に作品社を設立して「作品」を創刊し、これがすぐに休刊になったのち福武書店に入社して「海燕」創刊編集…

国立国会図書館に行ってきた。

関西館の所蔵資料も確認できた 調べ物のために行ってきました。初入館。これまで行きたいとは思っていましたが、調べ物が他の図書館で事足りていたこともあり、けっきょく行かなかったのです。 ある岩波文庫の初版と、雑誌のバックナンバー、また地方都市の…

爆発的ヒットがなくても。

漫画家・伊藤理佐 朝日新聞2月28日の「10代の君へ」は、漫画家の伊藤理佐の「好きって最強 人生が楽しく」でした。 伊藤理佐は1969年生まれで、小さな頃から漫画家志望だったが、周囲は本気にしてくれず、また漫画の地位は低かったためプロを目指していると…

板橋区立郷土資料館 古民家年中行事 ヒナマツリ

古式では男雛が向かって右 板橋区立郷土資料館で2月19日から4月3日まで、古民家年中行事のヒナマツリが開催されています。昨年ももちろん開催しており、このブログでも紹介しましたね。 ヒナマツリは言わずと知れた、女の子の成長と幸せを願う行事です。この…

会社にすがらざるを得ない人生

怪物との生々しいやり取り Eテレ「ねほりんぱほりん」を欠かさず見ています。前回(2/25)は元大手企業の「リストラ担当者」が2名登場し、社員に退職を勧告する際のエピソードが紹介されました。人事担当者と社員たちのやり取りは、喧嘩もあれば自殺もあり、…

佐伯一麦とアイスランドサガ

翻訳家yook yook(ユック)という翻訳業をしている人による、QXエディタのユーザーである佐伯への、QXエディタに関するインタビューです。このページは2000年3月15日にアップされたようですが、恥ずかしながら存在を知りませんでした。 二瓶浩明による佐伯年…

佐木隆三の「都落ち」

野呂邦暢の警告 ここ数日、感想記事を書いている文藝春秋編『無名時代の私』(文春文庫、1995年)ですが、このブログで3年近く前にも記事にしていました。佐木隆三の「長い長いトンネル」にあった「病膏肓に入る」について書いたのです。 今回また「長い長い…

吉村昭「遠い道程」

吉村昭のワナビ時代 かねて時間を見つけてはぱらぱら読んでいる文藝春秋編『無名時代の私』(文春文庫、1995年)。最後は吉村昭の「遠い道程」ですが、これもいいです。 23歳で学習院大学に入り、文芸部の機関誌「学習院文芸」に入る。その後、八木義德を合…

野口冨士男の無名時代

69人の無名時代 文藝春秋編『無名時代の私』(文春文庫、1995年)を読んでいます。文字通り、有名人が自分の無名時代について語ったもので、初出は「別冊文藝春秋」1990年新春特別号から1992年春季号。 寄稿者は深田祐介、池澤夏樹、妹尾河童、高森和子、三…