杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

文学フリマに出店します。

東京流通センターで5月16日(日)に開催される「第三十二回文学フリマ東京」に出店します。 かつて私は文学同人に所属して小説や評論を発表していましたが、そこは退会しました。以来、書き物はするものの発表する場所がなく、小説の新人賞応募なども落選す…

森稔『ヒルズ 挑戦する都市』

森稔『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書、2009年)を読んだ。 アークヒルズ、六本木ヒルズ、上海環球金融中心を中心に、森の都市づくりの取り組みや思想を綴ったもの。 面白かった。どんな街づくりも、数多の地権者や行政関係者が関わり、プロジェクト進行は…

寺山修司の短歌

寺山修司の短歌はおおむね好きである。しかし、 麻薬中毒重婚浮浪不法所持サイコロ賭博われのブルース この歌は、正直に言うと以前はしびれるものがあったが、今はそうでもない。 好きだったのは学生時代を含む二十代であり、その時代、私はワナビの痛さの中…

グラン駅の雪

「群像」2021年5月号の「小特集・旅」には「アンケート 思い出の駅」があり、五十一人が駅にまつわる思い出を寄稿している。その一人に佐伯一麦がいて、佐伯はノルウェーのグラン(Gran)駅という小さな駅にまつわる思い出を綴っている。 佐伯は1995年から翌…

「変える」と「変わる」

他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。 ようつべでビジネス系動画では、よく言われていると思う。私も四十路に到達してようやくそのことを理解してきて(幼稚なのです)、知人や仲間に対しては以前からだったが、親類縁者に対しても強要した…

「与えよ、さらば与えられん」

新約聖書の言葉らしいが、知らなかった。自分が他人から何かを与えてもらいたいなら、まずは自分から他人に与えよ、といった意味らしく、ビジネスの世界でも使われているようだ。「求めよ、さらば与えられん」などとも言うらしいが、どちらかが間違いなのか…

作家の収入

「本の雑誌」2020年1月号の鈴木輝一郎「生き残れ!燃える作家年代記」は、⑨お金編「収入が低いことより固定収入がないことが恐怖なんでござる」でござる。 内容はタイトルの通り、作家の収入について書いたもの。私は、印税は不労所得だと思っていたが、「初…

佐伯一麦と「蟠竜」

伊達政宗は、一国一城令がありながら領地内に仙台城とは別の城を築いた。「若林城」という、幕府には「屋敷」ということで建造の許可を取った城である。その中にはクロマツが植えられていて、これは現在では樹齢が推定三百年を超えているらしい。松は後年、…

「自己再認識」小説

ディーン・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』(朝日文庫、1996年)の第八章「登場人物にいかにもありえそうな動機を与える」は、文字通り小説における主人公の行動の発端となる七つの動機付けについて述べたものだが、その一つに、ドキリとさせられた…

小説家と銀行員

先日、鹿島茂『パリの王様たち』(文春文庫、1998年)を読み返す機会があって、こんな箇所に目が留まった。 小説家は銀行員のように仕事しなければならないといったのは三島由紀夫だが、バルザックは、この時期に、たんに文筆で金を稼ぐということだけではな…

欲望の優先順位

バビロンの大富豪の教えに「欲望に優先順位をつけよ」というのがある。やりたいことは絞らずに何でもやってしまおう、という人がいて、その通りだと思うのだが、実際にやっていく上では優先順位はついている方が良いと思う。 私は気が多い方で、あれもこれも…

創作雑記27 とにかく書き出してみる

ディーン・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』(朝日文庫、1996年)にこんな箇所がある。 多くの新人作家たちは、アイデアが完全に固まるまで机の前にすわってはいけないという、あやまった考えの影響を受けている。この世に完全なアイデアなどという…

フリーペーパーの世界

佐伯琴子『狂歌』(日本経済新聞出版社、2019年)を読んでいる。これは第十回日経小説大賞受賞作(2018年)で、著者の佐伯は第八回、第九回にも同賞の最終候補となった。 まだ全部読んでいないのだが、ストーリーは愛憎劇のよう。特に興味深いのは、作品の主…

事実は小説より奇なり

『ヒルズ 挑戦する都市』(朝日新書、2009年)著者の森稔は、もともと小説家志望で、不動産の世界に入った当初は小説のネタ集めくらいのつもりでいた。しかし、次第に開発の仕事にのめり込んでいくことになる。 赤坂のアークヒルズの開発の頃については、こ…

こんな人間もいるんだぞ。

小説は、天下国家を論じる大説の対義語であり、巷間の噂話、小さなお話といった意味を持つ。話である以上、人間たちの間に起きる出来事を通して、人間同士の関係が変化する、といったまとまりのある内容であることが肝要だと私は考えている。一人で漠然と哲…

電子書籍端末雑感

こないだある電子書籍端末が値引きされていたので買おうかなと思ったが、けっきょく止めてしまった。 値引きはいずれまたあるだろうし、冷静に考えて、自分は電子書籍端末がどうしても必要だろうか?と思ってしまったのだ。 ようつべのビジネス系動画では、…

町田哲也『家族をさがす旅』

町田哲也『家族をさがす旅』(岩波書店、2019年)を読んだ。 これは、証券会社社員であり作家でもある町田が、緊急入院した父の事績を色んな関係者に取材して回る、という内容で、第一章から第四章までは「現代ビジネス」2018年2月1日から8月9日に連載され、…

創作雑記26 高尚な主題の是非

新しい小説を構想している時、乗り越えるのが難しく、構想の進捗を停滞させる障害物に必ず出くわす。その小説の主題は「高尚」であるかどうか、という課題だ。 主題は小説に深みを与え、読者の感動を深くする効果があるが、私はこれまで、読者の心の最奥部を…

命の宴の主菜

マシュー・ウォーカー『睡眠こそ最強の解決策である』(SBクリエイティブ、2018年)を読むと、睡眠を敵に回すとどういう目にあうかが分かる。最近、本書に従って睡眠習慣の改善を試みている。まだうまく行かないことも多いが、少しずつではあるものの良い方…

役不足の地獄

近頃、慢性的な役不足状態による地獄を感じる。何に対してそう感じるかというと…それは読者には関係ないので書かないが、役不足状態を長く続けるのは頭にも身体にも毒、ひいては鬱めいた状態や自己肯定感の低下といった地獄に陥ることにもつながるのではない…

「教材」としてのデフォー

高橋裕一「『教材』としてのダニエル・デフォー(1660ー1731年)―ジョナサン・スウィフト(1667ー1745年)との対比も含め―」(慶應義塾大学教職課程センター年報、2019年度)は、著者からいただいた。著者は慶應大教職課程センター非常勤講師で、法政大学大原…

書き続け、発信し続ける。

ようつべには作家活動をする素人、言わばワナビを応援する人による動画もあり、ちょくちょく見ている。その中に、今の時代は賞を取って商業デビューするだけが作家になる手段じゃない、1円でも稼げばもうプロ作家と言える、と言っている人がいて、そうか、そ…

書き手の幸福

北方謙三『生きるための辞書 十字路が見える』(新潮社、2020年)の「男は心の無人島を求めるのだ」は、北方先生の愛読書に関する文章で、ここでは『ヘンリ・ライクロフトの私記』と『スイスのロビンソン』が挙げられている。その中で、書き手としての姿勢を…

駄作を世に出す勇気

『本の雑誌』に連載中の鈴木輝一郎「生き残れ!燃える作家年代記」をいつも読んでいる。2021年3月号は執筆編「駄作を世に出す勇気が大切でござる」で、書けない時の対処法が紹介されている。 書けない主な原因は、何も思い浮かばない、書くことがない、熟成…

写真は撮っておくもの

スマホを持ってから写真を撮るハードルがぐっと下がった。日常生活から仕事の合間まで、あらゆる時・ところでパシャパシャやっているが、最近、写真て撮っておくものだな、と思った。 そもそも私は「記録」を重視しているので、どこかに出掛ければ行った証と…

いっそ快眠マニアに…

マシュー・ウォーカー『睡眠こそ最強の解決策である』(SBクリエイティブ、2018年)を読んでいる。睡眠に関する様々な研究の結果を紹介しつつ、よく眠ることが仕事や生活のいろいろな悩みの解決策になる、と説く本。 睡眠や脳に関する本はこれまで複数読んで…

ストーリーが第一

ディーン・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』(大出健訳、朝日文庫、1996年)より。 プロット 人物描写 テーマ アクション ムード 人目を引くイメージ 気のきいた文章 背景 よい小説においては、これらの要素が渾然一体となって、魅力的なストーリー…

ドーパミン

最近、脳の状態や睡眠の質に注意を払うようになった。 完全なにわか仕込みの知識だが、スマホやネットはドーパミンを分泌させやすいため、寝る前には離れて過ごした方が良いということを知った。そしてそれが、経験と共に確信になりつつある。 自分で言うの…

「やらないこと」を決める

やることが多過ぎて時間がない。焦燥に駆られ、会社の仕事が終わってからも遅くまでライフワークに勤しんでいる。このブログの執筆もその一つである。やりたいことなので苦とは思っていないが、楽ちんでお茶の子さいさいというわけでもない。ブログ執筆だけ…

本の連鎖

読書マップとかそういう名前の、一冊の本から関連書がどんどん枝分かれしている読書案内みたいなツールがあるが、読書生活で悩ましいのはまさにその枝分かれで、一冊読むとさらに読まなくてはならない本が何冊も出てくるのだ。ちょっと興味が湧いたので一冊…