杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

未来のことなんて忘れろ!

何かに夢中になるって未来を忘れることです。明日の仕事とか週末をどうしようなんて考えている状態はしょせん未来にばかり気がいっちゃってて今現在を生きていないということだと思います。私は小説を書いているんですが毎日書き続けるのって決して楽ではな…

やってくれたら嬉しいこと、やってくれなきゃ困ること2

このブログで以前「やってくれたら嬉しいこと、やってくれなきゃ困ること」を書きましたが、あれはどちらかというと価値を「提供する側」への印象や見解でした。けれども最近、「提供される側」についても似たような印象を持ちました。 価値を提供される側、…

意欲と継続の精神

講談社「本」3、4月号の池上彰「伝える仕事」(第12、13回)は、池上さんが独立し、フリーランスになっていく過程が書かれている。 池上さんは「こどもニュース」を担当するようになってから本の執筆依頼を受けるようになり、仕事の幅が広がった。ここからNH…

「男のロマン」があるところ

勤め人をし、家族を養う日々を送る中で近ごろ感じるのは、私には、物書きとして作品を書くことなど誰からも一切期待されていないということだ。 押し並べて、夫とか父という存在は、働いて収入を得ること、それを元に家族を扶養することを期待されると思う。…

映画『ゴリオ爺さん』を観た。

昨日、千石図書館で映画『ゴリオ爺さん』を観た。 これはバルザックの『ゴリオ爺さん』を映像化したもので、主演はシャルル・アズナヴールが担当したもの。ウィキペディアを参照すると、アズナヴールがこの作品に出たのは2004年となっているので、80歳の時に…

心理的自叙伝2

朝日新聞に「ロスジェネはいま」という記事が載っていた。ロストジェネレーションという言葉は朝日新聞がきっかけになって普及したようで、1993年から2004年ごろに社会に出た世代と定義づけられているようだ。私は、厳密にいうと映画学校を2005年に卒業した…

佐伯一麦の私小説の強さ

佐伯一麦『渡良瀬』(新潮文庫、2017年)には、主人公の、決して明るく幸福だとは言えない家庭事情、特に妻・幸子との冷めた関係が描かれる箇所がしばしば出てくる。中で、こんな箇所がある。 車の運転も止めてしまい、家族と一緒にテレビゲームをやろうとし…

「病膏肓に入る」

文藝春秋編『無名時代の私』(文春文庫、1995年)は、有名人69人が文字通り「無名時代」について書いたエッセイを編んだもので、その中に佐木隆三「長い長いトンネル」が載っている。 これは、佐木が直木賞受賞作『復讐するはわれにあり』を書くまでのことを…

『渡良瀬』評の違和感

「文學界」に連載されている木村衣有子「BOOKSのんべえ」、5月号の第十回「昭和の終わり、茶碗酒」は佐伯一麦の『渡良瀬』を取り上げている。 しかしどうも違和感があった。主人公のことを「南條拓さん」などと書くのは、主人公への親しみの表れと受け止めれ…

「昔は良かった」

先日ある人と酒を飲んでいた時、その人が、今の時代が窮屈で何かとやりづらいことを述べた後、「昔は良い時代だったよなぁ~」と言った。 私はそれを聞いた瞬間、「おお出た出た『昔は良かった』!」と心の中で思った。しかし、どうやらその人も「昔は良かっ…

佐伯一麦とヴェルレーヌ

先日、佐伯一麦の「プレーリー・ドッグの街」(初出:「新潮」1989年6月号)についてこのブログに記事を書いたが、書くために当該作をぱらぱら読んでいたら別の発見があった。 初読時は何気なく読んで通り越しただけだったが、主人公が高架水槽で作業をする…

空気に爪を立てる

アンテナを張る、という言葉に近い意味の言葉として、「空気に爪を立てる」という言葉を聞いたことがある。何でもない風景の中に何かを発見できるようにするために、情報感度を高くすることだ。この言葉、聞いてからけっこう気に入っている。 私は外を歩く時…

佐伯一麦と「春の夢」

佐伯一麦『渡良瀬』(新潮文庫、2017年)を読んでいるのだがかなり長い。佐伯の読者でない人には退屈だが、実にユニークな書き方をしているとも言える小説で、そのことはいずれ当ブログできちんと書こうと思う。 ところで、新潮文庫の393ページの2行目に、こ…

宝物かごみ屑か

もう十年以上ライターをやっているので、取材メモは膨大な量が溜まっている。しかし先日、仕事机を大きく動かさなくてはならなかったので、引き出しに入れていた取材メモを思い切ってぜんぶシュレッダーにかけた。 用紙をシュレッダーに突っ込む時、過去に私…

やってくれたら嬉しいこと、やってくれなきゃ困ること

仕事をしていて時々思うのが、多くのお客さんにとって「やってくれたら嬉しいこと」と「やってくれなきゃ困ること」があり、両者は別々なのだが、それに気づいていない人がけっこういるのではないかということだ。 例えば飲食店で、笑顔での接客や想像を超え…

座右の銘

あたかもよく過ごした一日が安らかな眠りを与えるように、よく用いられた一生は安らかな死を与える。 いつの頃からかは忘れたが、これほど良い言葉はないと思って、ひそかに座右の銘にしている。レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だ。 経営者のインタビュー記…

何気ない言葉

取材と原稿執筆をメインの仕事にしている中で、何が仕事の喜びかと聞かれると、やはり取材することだ。 取材先で一期一会の相手と話し、相手の仕事や仕事観、ひいては人生観までも聞かせてもらう。これは意外と得るものが多く、特に私の好きな建設や街づくり…

水野亮と『従妹ベット』

『新潮世界文学小辞典』(新潮社、1966年)のバルザックの項は水野亮が執筆している。主要作品として紹介している中の『従妹ベット』の紹介のし方が面白い。 バルザックの小説はたいていの場合主人公一人が怪物じみた偏執狂で、あとの人物はいずれも腫物にさ…

最もやりたいことがなかなかできない

本ブログを開設して一年と二か月ほどが過ぎた。先日、総アクセス数が7000件を超えた。一日あたりのアクセス数は微増傾向にあるが、リピーターが多いからなのか、記事が増えてきて検索に引っ掛かる率が上がったからなのか、正確な理由はわからない。 私は本ブ…

何のために勉強するか

こないだ後輩のライターに先輩として講義する機会があり、その最後に、毎日勉強をしなさいよ、と煩く感じられない程度に伝えておいた。 勉強せよと言われると、やはり多くの人はストレスを感じると思う。私の中学生の頃の国語の先生は、「勉強」より「学習」…

エンジニアに学ぶ

以前、あるエンジニアが自分の体験を元にエンジニアとしてありたい姿を述べる文章を読んだ。そこには、考えることは悪いことではないが、考えてばかりいて手を打たないのは良くなく、仮説があるならどんどん実行してみよう、そうすれば最良の結果に早く辿り…

グルメ無思想

仕事柄、外食する機会が多い。出張で地方都市を訪ねることも少なくないのだが、話題の店の話題のランチとか、郷土料理とかご当地グルメを食べることはあまりない。 食べることへの欲求がそもそも少なく、体にいいあっさりしたものであれば良いと思っているの…

「物語と哲学」

根本昌夫『[実践]小説教室』(河出書房新社、2018年)の前半に「小説は「お話」ではない」とあり、驚いた。私は、小説というのは「お話」だと思っていたからだ。 該当の章をよく読んでみると、山田詠美と佐伯一麦の対談「内面のノンフィクション」に触れて…

友情について雑感

「友達」について議論するテレビ番組があったので見た。その番組は哲学が主たるテーマで、各回とも何らかの議題について「対話」によって認識を深めていこうとしているようだった。で、私が見た回の議題が友達だったのだ。正確には、友達はたくさん必要だろ…

復讐

『吉行淳之介ベスト・エッセイ』(ちくま文庫、2018年)の「私はなぜ書くか」は、グレアム・グリーンの「復讐」という短篇を中心に、トーマス・マンや萩原朔太郎の言葉なども引用しつつ、文学を必要とする人には人生に対し「復讐」しようとする心を持ってい…

板橋区郷土資料館 50周年

板橋区郷土資料館の企画展「郷土資料館 50年の展示 ~こんな展示がありました~」を見に行った。足を運んだ5月5日は館の中庭で鎧の着付け体験を開催していて、それをアピールするためか、入口の手前には鎧姿のパネルが立てられていた(写真)。 企画展は、前…

創作の二元論

創作の心得としてのメモ。 ・経糸と緯糸・構造と実存・ストーリーとキャラクター・叙述と描写・地と図・一般と特殊・相対と絶対・全体と部分・歴史と現在 などなど。 これらを意識して上手いこと交錯させていくと、話を立体的に描き出せるのではないかな。

仕事と躰のリズム

Twitterで情報を得て、『池島信平対談集 文学よもやま話 上』(恒文社、1995年)の司馬遼太郎との対談を読んだ。司馬が、創作について述べている箇所があったのだ。 対談は1970年10月31日に行われたものなので、三島由紀夫が自決する一か月くらい前になる。 …

世を忍ぶ仮の姿

以前、大学で教鞭を執っているが本職は編集者である人が、今こうして大学の先生をやっているのは本当の自分じゃない、世を忍ぶ仮の姿だ、という風に言っていた。 「世を忍ぶ仮の姿」と聞くと、一瞬、かっこいい感じがする。世間から隠れて何かしている人の、…

人間は物語を求める

新元号「令和」が始まった。 テレビでは、全国各地のお祝いイベントと、その中で陽気に浮かれ騒ぐ人びとの様子を放送していた。私は、べつに自分の生活になんら影響がない出来事なので何とも思わなかったが、こういうイベントはある種の高揚感をもたらし経済…