杉本純のブログ

本を読む。街を見る。調べて書く。

2018-01-01から1年間の記事一覧

「寄生虫方式」

はあちゅう『半径5メートルの野望 完全版』(講談社文庫、2016年)に、「寄生虫方式」という面白い成長の仕方が載っていた。 はあちゅうさんは、自分の見た目を変えるのに、つねに美人の近くにいるようにしたそうだ。ずっと美人の近くにいて、美人がどうし…

小説「名前のない手記」(11)

連載11回目。 →「名前のない手記」(11) →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4) →「名前のない手記」(3)…

「失敗は宝」

たしか小学二年の時だったと思う。担任の先生が教室の壁に掲げていた学級訓が「失敗は宝」だった。その言わんとするところは、子供心にも何となく理解できた。 きっと、失敗してもいい、そこから学んで成功につなげよう、といったメッセージだったと思う。 …

他人のエピソードで説教するクズ

私は人が武勇伝や自慢話を話し始めたら警戒するが、中には有名人の武勇伝を持ち出して私に説教してくる厭な奴がいて、そういうのはまったく相手にしないことにしている。 どういう人かというと、寺山修司は天才ですごい短歌を詠んだがお前の文学はちっともす…

「第二十七回 文学フリマ」に行ってきた。

11月25日、東京流通センター第二展示場で開催された「第二十七回 文学フリマ」に行ってきた。 実を言うと、私もこの回に出品しようと考えていたが、恥ずかしながら作品が間に合わなかった。同人誌ではないので不完全なまま出すわけにもいかないと思い、今回…

害なき悪、益なき善、害ある善。

『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』(岩波文庫、1954年)の上巻に、「自分に害なき悪は自分に益なき善にひとしい」という言葉がある。私はこれを「松岡正剛の千夜千冊」で知ったのだが、当時はなんだか深遠な言葉だと思った。 要するに、善だろうと悪だろう…

減らぬ「敷居が高い」の誤用

以前、このブログに載せた「日本語の誤用トップ5」で見事一位に輝いた「敷居が高い」だが、私がブログに書いたところで何か効果があるはずもなく、減るどころか増え続けているように感じる。 中でも、文章を書く仕事をしている人が誤用している例が多い。そ…

研究者とライター

先日、ある会社の研究に従事する人に話を聞く機会があった。街に関わる研究をしている人だったのだが、さまざまなデータを収集し、それを目的に合わせて適宜判断・活用するだけでなく、研究テーマの実例になる場所に足を運んで現地人にヒアリングし、実態を…

小説「名前のない手記」(10)

連載10回目。 →「名前のない手記」(10) →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4) →「名前のない手記」(3) →「名前のない手記」(2) …

「いたばし大交通展」に行ってきた。

板橋区立郷土資料館に行き、都営三田線開業50周年記念の「いたばし大交通展」を見た。 江戸時代の中山道から現代の都営三田線、東武東上線などまで、文字通り板橋の交通の歴史を伝える企画で、資料がやたら豊富で楽しい展覧会だった。 来年は高島平が誕生50…

自分を救うのは自分

たしか美輪明宏さんが『人生ノート』(Parco、1998年)でそんなことを書いていた。近ごろ、その言葉を肝に銘じておかないとなと感じることしきりである。 自分のことは他人の方がよく知っているなどということがあるが、けっきょく自分のことを最もよく知っ…

「天文学と印刷」を見た。

先日、初めて印刷博物館に行き、開催中の企画展「天文学と印刷」を見てきた。天文学も印刷もほぼ素人の私だが、会場の演出が面白かった。アリストテレスやプトレマイオスやコペルニクスといった、聞き覚えのある西洋の学者の名前が出ていたりして面白かった。…

発想の転換

このところ、年末仕事が立て込んで体力的にもけっこうきつかった。ある時期は、週末にかけてちょっと体調を崩してしまい、さらに、翌週にも大量の仕事が待っているのが分かっていて精神的にもやや鬱っぽくなっていた。 だから土日は昼寝もしてたっぷり休養を…

躰は何でも知っている

そんなタイトルの本を、たしか吉本ばななが書いていたと思う。「躰」でなく「体」だったかも知れないと思い、調べてみたら、吉本のは『体は全部知っている』というタイトルで、他にも『体は何でも知っている』とか『身体は何でも知っている』とか似たような…

作家の「肚」

近ごろ、小説を書く上での書き手の「肚」について考えることがよくある。 思うに、小説を上手く書き進められない人の多くは、「肚」が据わっていない状態なのではないか、ということだ(その「人」には私も含まれる)。 例えば、主題を決める、人物を決める…

小説「名前のない手記」(9)

連載9回目。 →「名前のない手記」(9) →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4) →「名前のない手記」(3) →「名前のない手記」(2) →「名前のない手記」(1)

共依存する人びと

最近よく感じるようになったのは、共依存に陥っている者たちが自分の周りに意外に多いことだ。 表面的には相手を批判したり、見下したり撥ねつけたりしているのだが、よく見ると、当人は相手から頼まれたり依存されたりするのを望んでいる。期待している。相…

佐伯一麦と大庭みな子

佐伯一麦は1984年、「木を接ぐ」で「海燕」新人文学賞を受賞して本格的なデビューを果たした。この時の新人賞の選考委員は瀬戸内寂聴(当時「晴美」)、中村眞一郎、古井由吉、三浦哲郎、そして大庭みな子である。 佐伯は大庭に対し、河北新報の連載エッセイ…

こだわりのほころび。

アラフォーになり、色んなことが相対化されてきたのを感じる。 こだわりがほころびてきたのである。以前は、俺は絶対、新人賞を取ってデビューしてやると鯱張っていた。その成功イメージは、さながらオセロで最後の一手で全部ひっくり返すような、あるいは野…

「創作の部屋」が半年経過

先日の午後、はてなからメールが来た。これまで色んな通知を受けていたが、今回は私のブログ「創作の部屋」が開設して半年が経ちましたよという報せだった。 「創作の部屋」は、私の創作した作品を発表する場である。これまで発表してきたのは主に過去にウェ…

ニュートラル

佐伯一麦の随筆集『月を見あげて 第二集』(河北新報出版センター、2014年)の「執筆五分前」には、以前ある文藝雑誌に「執筆五分前」という連載コラムがあったと書いてある。そのコラムでは、小説家や漫画家などの作家が、筆を執る前に習慣的にやっているこ…

全部は細部を超越する

佐伯一麦の『月を見あげて 第二集』(河北新報出版センター、2014年)の「鶯と雲雀と」には、鶯と雲雀に関する話題から谷崎潤一郎の『春琴抄』の話になり、同作に対する川端康成の指摘を紹介している。 川端は、『春琴抄』は「ただ嘆息するばかりの名作」だ…

小説「名前のない手記」(8)

連載8回目。 →「名前のない手記」(8) →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4) →「名前のない手記」(3) →「名前のない手記」(2) →「名前のない手記」(1)

家族から理解されない男のロマン

「亭主の好きな赤烏帽子」という言葉を最近知った。一家の主人が好んでやっているなら家族はそれに同調しなくてはならないという意味で、他人から笑われようと好きにやらせておくべきだ、といったニュアンスもあるらしい。 この言葉は、四十路に差し掛かろう…

勉強は自分からするもの

先日、あるライターと仕事について会話した。そのライターは私より年下なのだが、今の自分が直面している、この取材の原稿を上手く書けるだろうかといった問題や、自分は取引先に気に入られているだろうかといった疑問よりも、自分にはやりたい仕事があるが…

事実は小説よりも奇なり

東京大学立花隆ゼミと立花隆の『二十歳の君へ』(文藝春秋、2011年)は、東大立花ゼミの学生らによる著名人・職業人へのインタビューと、立花によるレクチャー、そしてゼミ生たちの思いがまとめられた、全三章からなる本である。立花ゼミと「二十歳」と言え…

佐伯一麦の夫婦観

佐伯一麦の「木の一族」辺りまでの私小説を読むと、佐伯自身の一回目の結婚がどういう経緯をたどって破局したかを、ある程度想像することができる。私小説群が事実そのままであったならば、その結婚はかなり幼いものだったのではないか、と思える。ただし、…

親の一言

「eスポーツ」という言葉を最近知った。エレクトロニック・スポーツの略で、スポーツとしてのコンピューターゲームという意味である。アマチュアだけでなく、年収1億円を稼ぎ出すプロもいるらしく、海外遠征の際はアスリートビザが発行されるというからすご…

新聞記事から小説へ

佐伯一麦の『月を見あげて 第二集』(河北新報出版センター、2014年)の「新聞紙の効用」には、佐伯の短篇「二十六夜待ち」が、薬局で院外処方の薬を受け取った時、その包み紙にされていた河北新報の記事にヒントを得た、と書いてある。面白い。「二十六夜待…

小説「名前のない手記」(7)

連載7回目。 →「名前のない手記」(7) →「名前のない手記」(6) →「名前のない手記」(5) →「名前のない手記」(4) →「名前のない手記」(3) →「名前のない手記」(2) →「名前のない手記」(1)